NS5000基本定数を調べる方法について 2013,3/25 基本定数とは、赤経、赤緯軸を1回転させるために必要なモータパルスの総数のことです。 モータパルス1つをモータに送ると最小の1ステップ回転します。 例えば赤経基本定数分のパルスを赤経モータに送ると、極めて正確に、赤経軸は1回転(360度)します。 NS-5000は、これを基にして恒星時速度、赤経、赤緯座標を計算しています。 そのため自動導入を実現するには、正確な基本定数を知り、コマンドで基本定数を登録して置く必要があります。 通常、基本定数は赤道儀のウオームギア、モータなどの各パラメータから計算します。 例えば、赤経軸が モータ1ステップ角1.8゜、1/8分割マイクロステップ、減速ギア比18:1、伝達ギア比2:1、ウオームギア240:1 の場合は下式で計算することができます。 基本定数 (200 * 8 * 18 * 2 * 240) = 13824000 0x00D2F000 恒星時速度 (200 * 8 * 18 * 2 * 240) / 86164 = 160.438 pps しかしウオームギア、モータなどの仕様が良く分からない場合は基本定数が計算できません。 この場合は、ユーティリティソフトを利用し、赤道儀を操作して直接基本定数を調べることが可能です。 この説明書は、その具体的な方法について解説しています。 **** 以下の手順にしたがってデータを記録してください。 **** 得られたデータから基本定数を調べることができます。 1 赤道儀にNS-5000をつないでください。   NS-5000にRS232CケーブルでPCと接続してください。電源をONにすると、直ぐに恒星時運転が始まります。 2 ハンドボックスで最高速度にしてから、赤緯スイッチ(上下)を操作して赤緯を回転させてみてください。 3 赤緯を停止、恒星時運転の状態にしてください。   PCにおいて ユーティリティソフト NS200_Navigator_1_1.EXE を起動してください。   COM番号(1〜4)を合わせてから「START」押します。   「バージョンコマンド」のボタンを押して、「アンサ」にタイトルが出ましたら正常に動いています。 4 「コマンドを入力してください」 の欄に、#:&XSYS1# をコピペしてから、「コマンド送信」ボタンを押してください。   すると、恒星時運転が止まります。(一時的に経緯台モードにして恒星時を止めます) 5 #:&XRA#をコピペしてから、「コマンド送信」ボタンを押してください。   すると「アンサ」に数字が表示されます。   赤経基本定数 「        」 その数字を記録してください。 6 #:&XDEC#をコピペしてから、「コマンド送信」ボタンを押してください。   すると「アンサ」に数字が表示されます。   赤緯基本定数 「        」 数字を記録してください。 7 つぎに、赤道儀 赤経、赤緯の目盛環に印を付けてください。 **** DEC 赤緯 8   「赤緯モータパルス数」ボタンを押してください。「アンサ」に数字が表示されます。 スタート位置 0°「        」を記録してください。    回転方向はどちらでもかまいません。ハンドボックス赤緯ボタンを押して、約90°回転してください。だいたいで結構です。   位置 90°「        」    約180°回転してください。だいたいで結構です。   位置 180°「        」    約270°回転してください。だいたいで結構です。  位置 270°「        」    360°(1回転)、印の位置で止めてください。 <<なるべく正確に>>    「赤緯モータパルス数」ボタンを押してください。     位置 360°「        」 **** RA 赤経     望遠鏡、赤緯体と赤道儀の接続ケーブルなど邪魔になることがありますが、工夫して1回転のデータをお願いします。     赤道儀から望遠鏡を 9   「赤経モータパルス数」ボタンを押してください。「アンサ」に数字が表示されます。 スタート位置 0°「        」を記録してください。    回転方向はどちらでもかまいません。ハンドボックス赤経ボタンを押して、約90°回転してください。   位置 90°「        」    約180°回転してください。   位置 180°「        」    約270°回転してください。  位置 270°「        」    360°(1回転)、印の位置で止めてください。 <<なるべく正確に>>    「赤経モータパルス数」ボタンを押してください。     位置 360°「        」 作業は以上です。 以下にまとめてご記入後、お知らせください。    赤経基本定数 「        」 数字を記録してください。    赤緯基本定数 「        」 数字を記録してください。 DEC 赤緯 >>   スタート位置 0° 「        」 >>   位置 90°  「        」 >>   位置 180° 「        」 >>   位置 270° 「        」 >>   位置 360° 「        」 RA 赤経 >>   スタート位置 0° 「        」 >>   位置 90°  「        」 >>   位置 180° 「        」 >>   位置 270° 「        」 >>   位置 360° 「        」 **** 以下は実例(昭和20E赤道儀)です。参考にしてください。データから基本定数を求めています。 **** お客様からのメール。 「先程テストをいたしましたので、 結果を送信いたします。 基本定数は初期値から変更いたしておりません。 > >>   赤経基本定数 「00724200#」 数字を記録してください。 > > >>   赤緯基本定数 「004F1A00#」 数字を記録してください。 > > > 赤緯 > >>   スタート位置 0° 「004D5109#」 > >>   位置 90°    「003D80C3#」 > >>   位置 180°   「002DB11D#」 > >>   位置 270°   「001DE9BA#」 > >>   位置 360°   「000E0A08#」 > > > 赤経 > >>   スタート位置 0° 「0071FE82#」 > >>   位置 90°    「006238B1#」 > >>   位置 180°   「00525ECB#」 > >>   位置 270°   「00428899#」 > >>   位置 360°   「0032B95F#」 > > アンサ値は以上の様にになりました。」 **** データから以下のようにして基本定数を求めました。 > 赤緯 > >>   スタート位置 0° 「004D5109#」  5067017 0 0 > >>   位置 90°    「003D80C3#」 4030659 -1036358 > >>   位置 180°   「002DB11D#」 2994461 -1036198 > >>   位置 270°   「001DE9BA#」 1960378 -1034083 > >>   位置 360°   「000E0A08#」 920072 -1040306 -4146945  0x003F4701   赤緯 90°平均パルス=4146945 / 4=1036736.25パルス 上記結果から正しいと判断できる ****DEC計算 1 伝達ギア比を x として逆算してみる 1ステップ角1.8゜、1/8分割、減速ギア比9:1、伝達ギア比x:1、ウオームギア180:1 基本定数 = (200 * 8 * 9 * x * 180) = 4146945 0x003F4701 x = 1.59990 ----->1.6 の可能性がある。 ****DEC計算2 伝達ギア比を 1.6 として計算してみる 1ステップ角1.8゜、1/8分割、減速ギア比9:1、伝達ギア比1.6:1、ウオームギア180:1 赤緯 基本定数 = (200 * 8 * 9 * 1.6 * 180) = 4147200 0x003F4800 調査結果の360°のパルス4146945 と基本定数との誤差を計算してみると (4147200 - 4146945) / 4146945 *100 = 0.006% 誤差は無視出来るほど小さい よって、 赤緯 恒星時速度 = (200 * 8 * 9 * 1.6 * 180) / 86164 = 48.131 pps > 赤経 > >>   スタート位置 0° 「0071FE82#」 7470722 0 0 > >>   位置 90°    「006238B1#」 6437041 -1033681 > >>   位置 180°   「00525ECB#」 5398219 -1038822 > >>   位置 270°   「00428899#」 4360345 -1037874 > >>   位置 360°   「0032B95F#」 3324255 -1036090 -4146467 0x003F4523 赤経 90°平均パルス=4146467 / 4=1036616.75パルス ****RA計算 1 伝達ギア比を x として逆算してみる 1ステップ角1.8゜、1/8分割、減速ギア比9:1、伝達ギア比x:1、ウオームギア260:1 基本定数 = (200 * 8 * 9 * x * 260) = 4146467 0x003F4523 x = 1.10749 ****RA計算2 DEC計算2から、RAの基本定数もDECと同じと仮定してみると、 赤経 基本定数 = 4147200 0x003F4800 仮定 調査結果の360°のパルス4146467 と基本定数との誤差を計算してみると (4147200 - 4146467) / 4146467 *100 = 0.017% 誤差は小さい よって、基本定数は赤緯と同じだと推定できる。 ゆえに、 赤経 恒星時追尾速度 = 4147200 / 86164 = 48.131 pps 以上から、昭和20E赤道儀の赤経、赤緯の基本定数は同じで、恒星時速度は48.131 pps と推定する。